九州大学 マス・フォア・イノベーション連係学府

3ポリシー

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1. ディプロマ・ポリシー

教育の目的と養成する人材像

人工知能技術の爆発的発展により、データサイエンスは学術、技術、ビジネス、生活のあり方を激変させている。その柱となる数学の特長は、不変な理論的基盤を提供する厳密性と、変化する状況に柔軟に対応できる汎用性である。数学には、これらの強みを最大限に生かし、他分野との積極的な協働を通して、人類社会の未来を切り拓く役割が期待されている。特に、現実世界の諸問題を数学モデルとして定式化することにより数学的解析を可能にする数学モデリングは、現代社会の広範な領域において客観的に検証可能な方法論として重要な位置を占める。

本学位プログラムの連係協力学府である数理学府、システム情報科学府、経済学府における教育・研究は「数学モデルを用いて自然界や社会の様々な現象を解析して理解を深める」という点において本質的な共通項を持つ。本学位プログラムの博士後期課程においては、これまで培われた各連係協力学府の優れた専門的な教育・研究を基盤に、数学モデリングを通して組織や分野の垣根を越えて共創し、自らの専門分野の研究を高度なレベルで行い、国際的な視野でイノベーションを創発することのできる卓越した数学モデリング人材を育成する。博士前期課程においては、その前段階として、各連係協力学府の教育・研究を基盤に、基本的な数学モデリングを通して多様な組織や分野と共創して自らの専門分野の研究を行い、イノベーション創発に貢献できる人材を育成する。

本学位プログラムは、主として数理学、システム情報科学、経済学を学ぶ学生の中から優れた数学的資質と他分野との共創に意欲を持つ学生を選抜し、基盤となる学問分野の学びを発展させながら、「数学力」、「統計力」、「モデリング力」、「共創力」、さらにそれらを統合してイノベーションを創出する「創発力」も養う。(この5つの力を以下MFF = Math-Five-Forceと称す。)ダ・ヴィンチプログラム設立の趣旨に基づき、各学生が学問的必要性や興味に応じて分野を横断した様々な課題の中から選択して学習と研究を進められるように、マルチメンター制を併用した柔軟で個別的な研究指導体制を敷き、「数学モデリング」を共通項としてカリキュラムを編成する。

本学位プログラムのカリキュラムは連係協力学府での専門的教育課程を基盤とし、高度で先端的な数学モデリングの技術を習得し、それを用いて他分野との共創の経験を積むための科目を設定する。連係協力学府での専門的教育課程に相応する科目として「講究科目(セミナー)」と「専攻教育科目」を置く。また、システム情報科学、経済学を学ぶ学生に対して、現代的な数学を運用する共通の基礎力を養う「トランジション科目」を置く。そのうえで、本学位プログラムの卓越性を保証する中核科目として

  1. 高度で先端的な数学モデリングの技術の基盤となる、広範かつ発展的な「数学力」・「統計力」を涵養する「基礎科目」(博士前期課程)
  2. 実践的な場面で、数学モデリングを行う「モデリング力」及び、他分野との「共創力」を涵養する「インターンシップ科目」(博士前期課程、博士後期課程)
  3. 研究課題や研究の方向性について、組織や分野の垣根を越えて分かりやすく説明することのできる力を養う「プレゼンテーション科目」(博士後期課程)

を置く。

博士前期課程では、以下の30単位以上を修得し、かつ修士論文審査及び最終試験に合格することを修了要件とする。

  1. 基礎科目 4単位以上(「数学共創基礎Ⅰ~ⅩⅩ」の4単位を含む)
  2. インターンシップ科目 4単位以上
  3. 講究科目 10単位
  4. 各連係協力学府専攻教育科目 12単位以上
    (学位の分野と関連する学府の専攻教育科目※)

※数理学府数理学専攻、システム情報科学府情報理工学専攻・電気電子工学専攻、経済学府経済工学専攻それぞれの開設科目の中から、体系的かつ効果的学修が可能となるよう、指導教員を中心に履修指導の上、履修科目を適切に選択。

(以下の科目も「各連係協力学府専攻教育科目(12単位)」に含めることができる)

  • トランジション科目(システム情報科学府及び経済学府経済工学専攻に係る入学者選抜に合格した者に限る。)
  • 基礎科目のうち4単位を超えて履修する科目
  • 指導教員が必要と判断する他学府(連係協力学府を除く)の授業科目

博士後期課程では、以下の16単位以上を修得し、かつ、博士論文審査及び最終試験に合格することを修了要件とする。

  1. インターンシップ科目 6単位以上(「数学創発モデリング」の2単位を含む)
  2. プレゼンテーション科目 2単位
  3. 講究科目 8単位

学位授与の方針

(博士前期課程)

授与する学位の分野に応じ、連係する数理学府、システム情報科学府、経済学府において展開される専攻教育科目を通じて身に付けた学術基盤に加え、共創に必要な「数学力」・「統計力」・「数学モデリング力」・「共創力」、さらに基本的な「創発力」を身に付け、異分野や産業界との共創の経験を背景にしたレベルの高い研究に基づく修士論文を完成し、審査に合格した者に対し修士の学位を授与する。

(博士後期課程)

博士前期課程段階で身に付けた授与する学位の分野に応じた学術基盤をさらに強化し、共創に必要な高度な「数学力」・「統計力」・「数学モデリング力」・「共創力」、および異分野や産業界との共創によるイノベーションを生み出す高度な「創発力」、すなわちMFFを身に付けた上で、自身の専門分野の卓越したレベルの研究に基づく博士論文を完成し、審査に合格した者に対し博士の学位を授与する。

学位に付記する専攻分野の名称は次のいずれかとする。

〇博士前期課程

修士(数理学)、修士(技術数理学)、修士(情報科学)、修士(理学)、修士(工学)、修士(学術)、修士(経済学)

〇博士後期課程

博士(数理学)、博士(機能数理学)、博士(情報科学)、博士(理学)、博士(工学)、博士(学術)、博士(経済学)

※参照基準:日本学術会議『大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準 数理科学分野』2013年を参照(http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-h130918.pdf

学修目標

卓越B. 知識・理解の習得(知識・理解)(博士前期課程)

卓越B-1.現代数学を運用するために必要な基礎的な概念・知識を習得する。-「数学力」「統計力」【システム情報科学、経済学を学ぶ学生向け】

卓越B−2.数学モデリングで必要となる広範な数学的基礎知識を習得し、一般的な方法論と具体的な事例について理解する。-「数学力」「統計力」および基礎「モデリング力」

卓越C. 知識・理解の応用(博士前期課程、博士後期課程)

卓越C-1. 知識・理解の応用(適用・分析)-実践「モデリング力」

分野を横断した様々な問題について、数学モデリングを用いることで数学の言葉で記述し、他者と共有することで議論を深めることができる。

卓越C-2. 新しい知見の創出(評価・創造)-「共創力」

C-2-1.(新しい知見の創出)分野を横断した様々な問題の数学モデルに対して、数学的な解析を行うことで新たな知見を創出することができる。

C-2-2.(新しい知見の共創)数学モデリングを用いて得られた知見について、論文や口頭発表の形で他分野の研究者や関係者に説明し、議論を通して共創することができる。

卓越D. 知識・理解の実践的場面での活用(実践)-「創発力」(博士前期課程、博士後期課程)

数学モデリングの知識と方法論を用いることで、自らの専門分野の研究を発展させるとともに、異分野や産業界との共創によりイノベーションを創発する能力を身に付ける。

2. カリキュラム・ポリシー

ディプロマ・ポリシーを達成するために、図3(カリキュラム・マップ)に示す通り、以下の指針に基づいて教育課程を編成する。

コースワーク

本学位プログラムにおいては、各学生が修得を目指す学位の分野に係る学術基盤を身に付けるための、各連係協力学府における「専攻教育科目」に加えて、数学モデリングを理解し、活用する上で必要になる広範かつ発展的な知識・技能を習得し、実践的な場面での共創力を身に付けるために以下の科目を設定する。

1.「数学力」「統計力」および基礎「モデリング力」を養成するための基礎科目・トランジション科目《学修目標 卓越B》(博士前期課程)

1-1.数学共創基礎 I 〜 XX 《学修目標 卓越B-2》

「数学力」・「統計力」・「モデリング力」の基礎を徹底的に習得するため、学生が最初に学ぶ科目。

1-2.数学共創概論 I 〜 X 《学修目標 卓越B-2》

数学モデリングに必要な知識の習得を目的に、基礎から応用まで幅広く関連するテーマについて学習する科目。

1-3.数学トランジション基礎Ⅰ~Ⅵ 《学修目標 卓越 B-1》【システム情報科学、経済学を学ぶ学生向け】

学士課程専門教育レベルの数学を履修していない学生が本学位プログラムを円滑に履修できるように、学生の到達度に応じて、現代数学の基礎的な知識と概念を習得する科目。

2.実践「モデリング力」および「共創力」「創発力」を養成するためのインターンシップ科目  《学修目標 卓越 C,卓越 D》

2-1.数学共創モデリング 《学修目標 卓越 C》(博士前期課程)

学生がそれぞれの希望や志向に応じた異分野の研究室等で、学生、若手教員らと協働しつつ、その分野の基礎的事項を学ぶ。さらに、数学モデリングの側面から貢献し、共同研究・共著論文・学会発表等に取り組む。

2-2.国際共創力強化インターンシップ、異分野共創力強化インターンシップ、産学共創力強化インターンシップ 《学修目標 卓越 C, 卓越 D》(博士後期課程)

これらのインターンシップは、博士後期課程における選択必修とし、共創力強化を図る。「国際」では、海外の大学・研究機関等において研究と研究開発(業務)の実習を実施する。「異分野」では、異分野の研究拠点等に長期滞在し、数学モデリングの観点から貢献して共同研究を行う。「産学」では、産業界の協力の下、企業での研究に参加し、研究開発(業務)の実習を実施する。

2-3.数学創発モデリング 《学修目標 卓越 D》(博士後期課程)

学生を異分野の学内教員のもとに派遣し、当該学生がリバースメンターとなり、数学モデリングの観点から教員や他の学生をリードする。学生に数学モデリングで他分野の研究に貢献する経験をさせることで、学生本人のスキル向上と異分野への革新的な数学モデリングと解析手法をもたらすことを目標とする。

3.実践「モデリング力」および「共創力」を養成するためのプレゼンテーション科目

卓越論報 《学修目標 卓越C》(博士後期課程)

博士後期課程2年までの実績を中心に中間報告書を作成し、その内容について口頭発表を行う。研究の背景・過程・今後の戦略、数学共創モデリングや共創力強化インターンシップ等の数学共創実践に関する口頭発表、提出資料等に基づき、到達度、および博士論文に至る研究戦略を評価し、博士論文執筆資格を審査する。

4.「創発力」を養成するための講究科目

卓越基礎講究・卓越講究 《学修目標 卓越D》(博士前期課程、博士後期課程)

学生の基盤となる学問分野が展開される連係協力学府の教員による専門的な研究指導によるセミナーに対応する科目。この科目の履修により、中心となる学問分野である数学、数理科学、情報科学、理学、工学、経済学の学術基盤のさらなる深化と強化を図るとともに、本学位プログラムの履修で身に付けた数学モデリングの技術やMFFを用いることで、より高度で分野横断的な研究を行う。そうした中で、自身の中心的学問分野における研究を進め、修士論文や博士論文の執筆へとつなげてゆく。

学位論文審査体制

(博士前期課程)

提出された修士論文および最終試験(口頭発表)に基づいて、プログラム実施委員会がプログラム担当者等を構成員として設置するMFF評価委員会において審査する。

(博士後期課程)

提出された博士論文および最終試験(ディフェンス)における発表に基づいて、プログラム実施委員会がプログラム担当者や共創分野の研究者等を構成員として設置するMFF審査委員会(博士号)において審査する。

継続的なカリキュラム見直しの仕組み(内部質保証)

学修目標の達成度は、以下の方針(アセスメントポリシー)に基づいて評価する。評価結果に基づいて、研究指導体制、講義科目の教授方法や配置等の改善の必要性がないかを、プログラム実施委員会において継続的に検討する。

《アセスメント・ポリシー》

学位審査において学修目標の到達度の評価を実施する。

3. アドミッション・ポリシー

求める人材像

本学位プログラム博士前期課程では、数学、情報科学、経済学などに学問的基盤を持つ学生で、学士課程レベルでの数学の基礎学力が備わり、さらに高度で広範な数学の知識獲得や数学を用いた自らの研究の推進に意欲をもつ学生を求める。特に、高度に発達した数学理論の探究や数学モデリングを用いた応用研究に興味をいだくとともに、異分野や社会における課題にも挑戦し、新たな知見を獲得しようとする意欲のある学生を歓迎する。

なお、「学士課程レベルでの数学の基礎学力」とは、理系の学生を対象として教育が行われる「微分積分学」、「線形代数学」を初めとする、諸科学分野を学習する上で必須となる事項に関する基礎的な学術基盤や学力を指す。通常、理学部数学科等において身に付ける、現代数学の概念の理解を含む「数学力」「統計力」を習得していることを基本的に入学のための要件とするが、習得されていないときには、入学後にトランジション科目を課す。

本学位プログラム博士後期課程では、数学、情報科学、経済学などに学問的基盤を持つ学生で、大学院レベルでの数学の学力および実践的応用力が備わり、さらに高度で広範な数学の知識獲得や数学を用いた自らの研究の推進に意欲をもつ学生を求める。特に、高度に発達した数学理論の探究・構築や数学モデリングを用いた実践的応用の経験を持つとともに、異分野や社会における高度な課題にも挑戦し、新たな知見を獲得しようとする意欲のある学生を歓迎する。

入学者選抜方法(博士前期課程、博士後期課程)

基礎的な学力及び学問的な基盤を確認するために、原則として志望者には、数理学府、システム情報科学府、経済学府、等の既設専攻の入学者選抜を受験することを求める。既設専攻において合格者を決定した後、本学位プログラムを志望する者に対して、当学位プログラムへの適性を判断するために、出願理由書、推薦書等による書類審査及び口頭試問による選抜を行う。

なお、社会人学生、外国人留学生も受け入れるが、上記選抜方針は変わらない。

また、外国人留学生の日本語もしくは英語能力については、口頭試問において確認する。